近年、評価の高まっている日本ワイン。「ワイン事業をビールに次ぐ第二の柱にする」という目標を掲げているサッポロビールが展開する「グランポレール」もその一翼を担うブランドの一つです。
北海道、長野、山梨、岡山と気候風土の違う4か所のワインヤードで育てられたぶどうを、勝沼と岡山にある自社ワイナリーで熟成して創られるワインは、2007年の英国インターナショナル ワイン&スピリッツコンペティションで金賞受賞するなど、高い評価を受けています。
そのサッポロが、自社ぶどう栽培会社であるサッポロ安曇野池田ヴィンヤードにAI(人工知能)を導入したそうです。AI導入もすごいですが、栽培のために別会社を作っているところもサッポロの本気度が推し量られるところです。
安曇野池田ヴィンヤードにAIを導入した理由としてサッポロは、各種データを活用して栽培技術を「見える化」する事で、ぶどうの品質のさらなる向上と栽培技術の伝承を目指すといいます。
具体的には、ワインヤードに設置したセンサーで気象・土壌等の情報を収集し、生育状況や品質と合わせてデータベースに蓄積・分析することで、最適な作業指示をリアルタイムでワインヤードのスタッフにフィードバックするというもの。このAIは農学系の博士号をもつ社外の研究者が開発に携わり、従来の農業で重視されていた経験や勘といった抽象的なものではなく、科学的に数値化された農業技術を用いて栽培を実現していくそうです。さらに、現地栽培技術者の知見も組み込めむことができるようになっていて、各ワイナリーがもつ独自の栽培ノウハウを蓄積し、さらに他のワイナリーへと共有することも可能になるとか。
また、安曇野池田ヴィンヤードのぶどう栽培技術を次代の技術者へと伝承していくスピードを上げることも導入の目的としているそうです。世界的にも高い評価を受けるようになったワインを生み出す高い品質のぶどうづくりを維持・向上させつつ、さらにワインヤードを拡大していくためには、熟練した栽培技術者を増やしていく必要があります。さらには自社ぶどう園のみならず、契約農家にもこのAIシステムに蓄積された知見を展開することで、より安心して長期的に高品質なぶどうを供給してもらえることを目指すそうです。
サッポロは将来的には、このAI技術によって得られたワイン用ぶどう栽培のノウハウを、今後ワイン用ぶどう栽培に参入する農家に提供し、高品質なぶどうを作る契約農家を増やしていこうと考えているようです。また、そうすることで農業の後継者不足対策にも役立ちたいそうです。
今やブームともいえる日本ワイン。ハイテクニッポンならではのこうしたAI技術のワイン造りへの活用は、今回のサッポロの他にも、2005年からサントリーワインインターナショナルも大学と共同で取り組んでいます。
こうした日本ならではの試みが、日本ワインのさらなる飛躍に繋がることを期待したいですね。
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