2023年9月10日、ポルトガルのアベイロ県アナディアに位置する「デスティラリア・レヴィラ」醸造所において、赤ワインの貯蔵タンク2基が突如として爆発し、約220万リットルものワインが周辺地域に流出するという、未曾有の事態が発生した。
300万本分のワインが街を飲み込む
流出したワイン量は、およそ300万本のワインボトルに相当し、その量は横50メートル、縦21メートル、水深2メートルのオリンピック規格のプール1杯分に匹敵する規模だという。
SNS上に公開された映像からは、醸造所近隣の住宅や道路が、まるで急流のごとく流れ込むワインによって一瞬にして「紫色の川」と化す様子が確認できる。コメント欄には「グラスとストロー持ってすぐに行きたい」「私の楽園」「ハッピーアワー?」「ここで泳ぎたい」といったユニークなコメントが続々と寄せられている。
醸造所は謝罪と責任表明
「デスティラリア・レヴィラ」醸造所は、公式フェイスブックアカウントを通じて、原産地保護認証(DOC)ワインを貯蔵していたタンク2基が破裂した事実を認め、地域住民へ心からの謝罪の意を表している。
同醸造所は、今回の事故により地域全体、そして近隣住民へ多大な被害をもたらしたことを深く憂慮しており、全額負担による被害復旧を行うと表明した。
ワインの流出は防ぐも、原因は不明
地元当局は、迅速な対応によりワインが近くの川に流出することを防ぎ、二次的な環境汚染を回避した。
しかしながら、ワインタンク爆発の正確な原因については、現在も調査が続けられており、未だ解明に至っていないという。また、住宅や建物の被害状況についても、現在詳細が把握されつつある。
欧州のワイン供給過剰問題との関連性
ニューヨーク・ポスト紙は、今回の事故が、欧州におけるワインの供給過剰という深刻な問題と関連している可能性を指摘している。
同紙は、ポルトガルをはじめフランスやイタリアなど、欧州の主要ワイン生産国が、消費の低迷と輸出の減少により、過剰なワインを抱えている状況にあると報道。今回の事故で破裂したタンクも、その余剰ワインを貯蔵するために使用されていたものと見られている。
まとめ
ポルトガルにおけるワインタンク爆発事故は、地域住民に多大な影響を与えただけでなく、欧州ワイン業界が抱える構造的な問題をも浮き彫りにした。今回の事故を教訓とし、ワイン生産における安全対策の強化が求められるとともに、欧州ワイン業界全体の構造改革も急務と言えるだろう。
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